ラジャアンパットの村がエコツーリズムで自然を守る:ニッケル採掘の脅威に立ち向かう住民たち

政治・政策

世界最高の海洋生物多様性を誇る西パプア州ラジャアンパット群島。その一角にあるサポルクレン村(Saporkren)では、住民たちが自立的なエコツーリズムを通じた環境保護に乗り出しています。しかし、インドネシア政府が進める強力な鉱物資源開発の波が、この「地球上の宝庫」の生態系を脅かそうとしています。

サポルクレン村:守るべき「生命の宝庫」

ワゲオ島に位置するサポルクレン村は、単なる観光地ではなく、科学的にも極めて重要な生態系を有しています。

  • 海洋の豊かさ: 世界のサンゴ種の約75%が確認されているラジャアンパットの心臓部。
  • 固有種の宝庫: 「赤い極楽鳥(Red Bird of Paradise)」など、世界中でここだけにしか生息しない野鳥たちの聖域。
  • コミュニティの知恵: 住民は「Sasi」と呼ばれる伝統的な禁漁・保護慣習を現代のエコツーリズムと融合させ、持続可能な生計を立てています。

迫り来る「ニッケル採掘」の脅威

プラボウォ政権が「8%成長」の鍵として推進するニッケル開発は、スラウェシ島やハルマヘラ島を経て、いまやパプア地域を射程に収めています。

  • 汚染のリスク: ニッケル採掘に伴う土砂流出や、精錬プロセスで発生する廃水の海洋放出(DSTP)は、サンゴ礁を壊滅させる恐れがあります。
  • 森林の喪失: 露天掘りによる熱帯雨林の伐採は、極楽鳥たちの生息地を奪い、パプアのアイデンティティそのものを損なう懸念があります。
  • 住民の懸念: 「一度海が死ねば、観光客は二度と戻ってこない」という悲痛な声が、地域コミュニティから上がっています。

観光か、開発か。国家のジレンマ

インドネシア政府は、EV(電気自動車)電池大国としての地位(ニッケル)と、持続可能な観光地としてのブランド(ラジャアンパット)の板挟みになっています。

項目ニッケル開発エコツーリズム
経済的役割国家のGDP成長、外貨獲得の柱地域住民の雇用、文化的自立
環境負荷極めて高い(森林・海洋汚染)低い(保全が前提の経済)
国際的評価供給網としての重要性生物多様性保護のフロントライン

✍ 筆者あとがき:GDPには映らない「本当の富」の行方

数字だけを見れば、ニッケルを掘り出した方が国のGDPは上がるのでしょう。しかし、ラジャアンパットのサンゴ礁を一度失えば、それは人類にとって計算不可能な損失となります。
2026年のインドネシアは、かつてないほど「豊かさ」の定義を問われています。ダナンタラが世界と提携し、1.5万人のエンジニアが育つ国。その一方で、一羽の極楽鳥を守るために汗を流す村人がいる。この極端なコントラストこそが、今のインドネシアのリアルです。資源大国としてのプライドを、自然という名の「資本」を切り売りすることに使うのか、それとも守り抜くことに使うのか。その答えが、この村の未来に映し出されています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました