インドネシア汚職裁判が混迷:KPKとヤクット氏の法廷闘争を解説

政治・政策

インドネシア汚職撲滅委員会(KPK)は2月24日、ヤクット・チョリル・クマス前宗教大臣が申し立てた事前司法審査(プラペラディラン)の初公判に出席せず、1週間の延期を裁判所に申請しました。KPK側は、法務チームが同日に他の4つの重要事件の裁判を並行して抱えており、物理的な対応が不可能であると説明しています。

ヤクット氏を巡る「ハッジ汚職」の背景

ヤクット氏と元特別補佐官イシュファ・アビダル・アジズ(通称ガス・アレックス)氏は、2026年1月8日に正式に容疑者として指名されています。

  • 主な容疑: 2024年のハッジ(メッカ巡礼)において、サウジアラビアから追加割り当てられた2万人の枠を、法律で定められた割合(正規8%:特別92%)を無視し、50:50で不当に配分した疑い。
  • 被害額: KPKの試算では、この権限濫用による国家損失は**1兆ルピア(約96億円)**を超えるとされています。

プラペラディラン(事前司法審査)の攻防

ヤクット氏は、KPKによる容疑者指定の手続きに不備があるとして、南ジャカルタ地方裁判所に申し立てを行いました。

  • ヤクット側の主張: KPKが適用した汚職防止法の条文が旧法に基づいているなど、手続き上の「瑕疵」を指摘。
  • KPKの対応: 2月24日の公判を欠席。「単なる欠席ではなく、並行する他事件(e-KTP汚職関連など計4件)との調整が必要」と釈明。
  • 裁判所の判断: 裁判官は3月3日への延期を決定。次回もKPKが欠席した場合は、KPK抜きで審理を進める方針を示しています。

2026年ラマダン前の緊張感

今回の延期により、本格的な審理は3月のラマダン(断食月)期間と重なる見通しです。

  • 政治的影響: 宗教大臣という聖職に近いポストでの汚職疑惑は国民の関心も高く、ラマダン中の法廷闘争は政権にとっても大きなプレッシャーとなります。
  • 多発する汚職裁判: KPKが「4件同時」を理由に延期を求めたことは、ジョコウィ政権末期からプラボウォ政権初期にかけて、汚職摘発がかつてない規模で加速している現状を物語っています。

✍ 筆者あとがき:司法のパンクか、それとも「時間のチェス」か

宗教省という、インドネシア人の「祈り」を司る役所のトップが、巡礼の枠をめぐって法廷に立たされる。このあまりにも皮肉な構図は、多くの市民にとって株価の大暴落よりもショッキングな出来事です。
「4件の裁判を抱えて手が回らない」というKPK(汚職撲滅委員会)の言い訳は、皮肉にもこの国にどれほど多くの「闇」が積み残されているかを証明してしまいました。まもなくラマダンが始まりますが、断食で胃袋を空にする前に、まずは司法の場で心の「大掃除」が間に合うのか。3月3日の法廷は、国民の信仰心が試される場にもなりそうです。

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