2026年、インドネシアが国連人権理事会(UNHRC)の議長国として、国際的な人権議論のタクトを振ることになりました。掲げたスローガンは**「Kepresidenan Untuk Semua(全員のための議長国)」**。多様な価値観が衝突する国際社会において、中立的な立場から対話を促す「架け橋」としての役割を強調しています。
独自路線「自由で活発な外交」の体現
プラボウォ政権は、伝統的な外交原則である「Bebas Aktif(自由で活発な外交)」を堅持しています。
- 中立性の強調: 特定の陣営に偏らず、米中対立の激化やロシア・ウクライナ情勢、パレスチナ問題といった複雑な課題に対し、グローバルサウスの視点を取り入れた独自の解決策を模索します。
- 外交的プライド: G20サミット(2022年)やASEAN議長国(2023年)で見せた高い調整能力を、今度は「人権」という普遍的かつデリケートな分野で発揮することを目指しています。
山積する難題と議長国としての手腕
「全員のための議長国」というスローガンの裏には、各国の深刻な立場の違いをいかに調整するかという、極めて困難な舵取りへの決意が込められています。
- 主要な論点:
- パレスチナ情勢: イスラム教徒を多く抱える国内世論と、国際的な人道的要請のバランス。
- ミャンマー問題: ASEANのリーダーとして、人権侵害に対する実効性のある対話の構築。
- グローバルサウスの権利: 途上国の発展の権利と、先進国が重視する市民的権利の調和。
日本とのパートナーシップ
日本もUNHRCの加盟国として、インドネシアのリーダーシップを注視しています。
- 二国間連携: 自由で開かれた国際秩序を重視する日本にとって、インドネシアが議長国を務めることは、アジア全体の声を人権議論に反映させる大きな機会となります。
- 新たな協力関係: 経済だけでなく、法整備や人権保護の枠組み作りにおいても、両国の協力が深まることが期待されます。
✍ 筆者あとがき:「多様性の中の統一」を世界へ輸出する
インドネシアの国是である「Bhinneka Tunggal Ika(多様性の中の統一)」が、ついにジュネーブの国連本部で試される時が来ました。
「全員のための議長国」というスローガンは、いかにも八方美人に聞こえるかもしれませんが、宗教も民族もバラバラな1万数千の島々を一つにまとめてきた彼らにとって、それは単なる理想ではなく、生き残るための「技術」そのものです。米中が人権を武器に殴り合う中、その真ん中で涼しい顔をして「まあ、お茶でも飲んで落ち着け」と言えるのは、今の世界でインドネシアをおいて他にいないのかもしれません。



コメント