プラボウォ・スビアント大統領が、緊迫するイランと米国の紛争においてインドネシアが仲介役を担う意欲を表明しました。しかし、国内外の国際関係専門家からは、近年の露骨な「米国寄り」の外交姿勢を根拠に、その実効性と中立性を疑問視する声が相次いでいます。
「米国寄り」の姿勢が招く仲介者としての不適格性
アイルランガ大学のバイク・レカル氏をはじめとする専門家は、プラボウォ政権のこれまでの行動が「中立な仲介者」としての信任を損なっていると分析しています。
- 「バンドワゴニング(勝ち馬乗り)外交」: * 米国主導の「Board of Peace (BoP)」への参加。
- ガザへのインドネシア特別部隊(ISF)派遣(米国の枠組み内での活動)。
- 米国との互恵通商協定(RTA)締結。
- 専門家の見解: 「これほど親米的な行動を一貫して取っている国が、イランから中立な対話相手として信頼されるはずがない」と一蹴しています。
伝統的原則「自由活発(Bebas Aktif)」との解離
インドネシア外交の聖典ともいえる「自由活発(Bebas Aktif)」原則。特定の陣営に属さず、自律的に平和へ貢献するというこの精神が、現政権下で形骸化しているとの指摘があります。
- 「ナルシスト外交」との揶揄: レカル氏は、大統領の仲介意欲を「実績作りや自己顕示が先行した外交」と厳しく表現。
- 矛盾の露呈: 国際舞台での華々しい役割を求める一方で、実際の外交行動は米国の戦略的枠組みに深く組み込まれており、原則と実態の乖離が目立っています。
「足元の課題」への回帰を求める声
専門家たちは、遠方の紛争に介入する前に、インドネシアが本来主導すべき地域課題に集中すべきだと提言しています。
- ミャンマー問題: ASEANのリーダーとして、混迷を極めるミャンマー情勢の解決に向けた具体的進展。
- 南シナ海: 中国との緊張が続く海域での法的秩序の維持。
- 外交の一貫性: 仲介者としての信頼(クレディビリティ)は、言葉ではなく一貫した行動によってのみ回復できると結論づけています。
✍ 筆者あとがき:大統領の「英雄願望」と、専門家の「足元」への視線
プラボウォ大統領の目には、1955年のバンドン会議で世界のリーダーたちを魅了したスカルノの残像が映っているのかもしれません。しかし、現代の複雑な地政学において、仲介者の地位は「名乗り出る」ものではなく「請われる」ものです。
「遠くの火事(イラン問題)よりも、隣家の火事(ミャンマー問題)を消せ」という専門家の言葉は、極めて真っ当な正論です。華やかな国際舞台でのスピーチに酔いしれる「ナルシスト」であるより、地味で泥臭い地域外交の「実務家」であってほしい。そんな国民の願いを、スラバヤの学者が代弁した形です。果たして大統領の「平和の使者」という夢想は、現実という冷たい雨に打たれて目を覚ますのでしょうか。



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