インドネシア中央銀行(BI)のプルバヤ・スドゥシャトリオ総裁は2026年2月、天然資源由来の外貨収益(DHE SDA)に関する新たな規制が最終段階にあり、近日中に正式発表することを明らかにしました。この措置は、世界的な経済の不透明感が続く中、国内の外貨流動性を確保し、ルピア相場の安定性をより確固たるものにすることを目的としています。
DHE SDA規制の仕組みと目的
DHE(Devisa Hasil Ekspor)規制は、インドネシアの富である天然資源を輸出して得た外貨を、国外に流出させず国内の金融システムに還流させるための制度です。
- 対象セクター: 鉱業(石炭、ニッケル、銅など)、プランテーション(パーム油など)、林業、水産業。
- 現行の基本ルール: 輸出額の30%以上を、国内銀行の専用口座に最短3ヶ月間留保することが義務付けられています。
- 政策的狙い: 国内の外貨準備高を積み増し、ルピア安局面での介入原資を確保すること。
新規制で予測される「3つの強化ポイント」
正式な詳細は未発表ですが、これまでの総裁の発言や市場の予測から、以下の強化策が盛り込まれる可能性が高いと見られています。
| 強化項目 | 予測される内容 |
| 留保比率の引き上げ | 現行の30%から、さらに高い比率(40〜50%等)への引き上げ。 |
| 留置期間の延長 | 現行の3ヶ月から、より長期(6ヶ月等)への変更による資金の国内滞留促進。 |
| 対象範囲の拡大 | 規制対象となる品目の追加や、中小規模の輸出業者への適用拡大。 |
企業への影響とマクロ経済への波及
この規制強化は、資源輸出企業にとっては「諸刃の剣」となります。
- 企業のコスト増: 外貨を自由に運用できないことによる資金効率の低下や、ルピアへの強制両替に伴う為替リスクの管理が課題となります。
- マクロ経済の安定: 一方で、国内に潤沢な外貨が存在することは、輸入物価の安定や金利の急騰抑制に繋がり、インドネシア経済全体の強靭性を高めます。
✍ 筆者あとがき:地面から掘り出した「安心」の対価
石炭、ニッケル、パーム油。インドネシアの地面や木々から生み出される莫大な富は、時として「資源の呪い」となり、通貨の乱高下を招いてきました。今回のプルバヤ総裁の決断は、その呪いを「福」に変えるための、極めて現実的な処方箋です。
「自由貿易」という華やかな言葉の裏で、着実に自国の貯金箱(外貨準備)を重くしていく。こうした地道で、時に強引な政策の積み重ねが、今のインドネシアの「揺るがない自信」を支えています。次にルピア安のニュースが流れた時、この「留保された外貨」がどれだけの威力を発揮するのか。中銀が用意した「新しい盾」の真価が問われるのは、そう遠い日ではなさそうです。



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